月に響く笛耐震偽装 完全版
月に響く笛耐震偽装 完全版藤田 東吾
おすすめ度 ★★★★★
★★★★★ 2007-05-10 国交省と外郭団体のマフィアぶりが判る
一人でも多く、特に、「(姉歯元建築士の次に)悪いのは、民間確認検査機関イーホームズ」という作為的な情報を今もって信じている人々には、
ぜひお読みいただきたい。
国土交通省によるねじ曲げられた記者発表や、それに乗せられたマスメディアの報道とは全く違う真実を知ってほしい。
この本は、当初文藝春秋社から発行される予定で企画会議も通っていた。
しかし06年11月中頃、「アパグループマンションの構造計算書偽装」に関する記述を削除するか、国や行政が認めてからでなければ、
発行できないという文藝春秋社上層部の判断が示されたという。
それを受け入れることのできなかった藤田東吾氏は、文藝春秋社からの発行を断念し、自らが立ち上げた会社から一度は発行した。
そして4月25日、『【完全版】月に響く笛 耐震偽装』が講談社から刊行された。
この書籍の存在意義を認めた山下書店の社長が、講談社につないでくれたのだという。
本文では、国土交通省担当官らとのやりとりを含むメールが多く引用されている。テキに有無を言わせぬ証拠だ。
内容の充実ぶりからは、官僚と違って実務経験が豊富で優秀なスタッフたちに藤田社長が支えられていたことがよくわかる。
藤田東吾氏は、育て上げた会社の利益よりも国民の安全を優先して、耐震偽装の存在を世に知らしめた。最も賞賛されるべき人物だ。
そして国交省と検察のスクラムによって会社を潰された。
藤田氏の振る舞いは、自己保身に汲々とする国交省及び外郭団体という行政マフィアとは対極に位置している。
それに気付かない人々は、国交省による“偽装原因の隠蔽”も、それを検証もできずに乗った(プロとは言えぬ)記者クラブ報道を無批判に受け入れて、
醜い“付和雷同魔女狩り”に参加したのだろうが、いいかげんに目を覚ましてほしい。
今や、行政はアパの問題も次々に認めざるをえなくなっているではないか。
★★★★★ 2007-04-30 祝!出版
もとは文芸春秋から出版が計画されていたが、アパに関する記述を問題視され出版拒否にあってしまう。やむを得ず自費出版したらそれが思わぬ反響を呼び、今回講談社からめでたく出版の運びとなった。まずは著者の健闘と講談社の勇気に拍手を送りたい。以下は今回の完全版ではなく、自費出版のものを読んだ際の感想であることをお断りしておく。
耐震偽装事件は事の重大さに反比例するかのように、キワモノ的キャラクターの「濃〜い」登場人物たちがこれでもか、とばかりに跋扈した事件として多くの日本人の記憶に刻まれたのではないか。その多士済々の人物の中でも端整な風貌で一際異彩を放っていたのが本書の著者、イーホームズ社長・藤田東吾である。特に著者と好対照となる脂っこい系ワンマン社長・ヒューザー小嶋進との衆院参考人招致での競演は、姉歯秀次が鬘をはずして収監される場面と並んで、この物語のクライマックスといえる名場面であった、のだが。
しかし、本書を一読した今、そんな見方は権力とマスメディアが共謀して世論をミスリードすべく巧妙に作り上げたストーリーを表層的になぞっただけのものだったと感じる。メディア受けするキャラクターたちの泥仕合とは全く異なる次元で、本書ではこの事件の本質を執拗に抉っている。その本質とは、耐震偽装という事象の果てしない広がりと、偽装を生んだ原因が他ならぬ国にあったという事実、そして、最も重要なのは、真実を隠蔽するという国家意思の前には中小の企業や個人等の存在は羽毛よりも軽いという現実である。藤田はその現実に対し自分の全存在を賭けて闘い、そして現在も闘っている。逃げようと思えば逃げられたし、現にこの事件に関わった多くの人は如才なく振舞うことで、自らの保身を図ることに成功した。経営者としてだけでなく、一人の人間として彼のように闘うことは本当に難しいことだと思う。心から敬服し、エールを送りたい。
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